3月26日(土)、『Art for LIFE: 東北太平洋沖地震被災者支援プログラム』と題し、六本木アーツセンター主催でチャリティ・イベントが行われました。これは『六本木アートナイト2011』の中止に伴い、それに代わるイベントとして急遽実施されることとなったものです。

未曾有の災害に対しアートは何ができるのか。アートに携わる者ならば誰しもが考えることでしょう。自然の力を前に一旦はその無力さを感じて悩み、しかし同時にそれこそが人間の持ちうる強さだとも信じて、自分にできるだけのことを坦々とやる日常へ戻ったり、自分ができる活動へと進んでいく。震災から20日が経ち、そんな段階に今はあるようです。

このトークイベントでは、新たに起ち上げたウェブサイト『Art for LIFE』の趣旨説明に始まり、いち早く被災者のための活動を始めたアクティビストたちのプロジェクト紹介から、アートディレクターたちのトークセッションだけでなく、今回の震災で飛躍的に活用されたというソーシャルメディア(TwitterやFacebookなど)に関わるIT分野からのパネリストを交え、災害とアート、メディアについて自由な話し合いの場となりました。

全体を通して印象的だったのは、中村政人さん、椿昇さんなど、アーティストたちの話や言葉。中村さんは「出口ではなく、入口が大事」と言っていかに現場性が大切かということ、また「もうひとつの…」という言い方をしながら、「AでもなくBでもなくもうひとつの価値を見出すのがアートであり、社会のため、自分の住んでいるエリアのために何ができるか考え、自分たちで自分たちの場所を作り、自分たちの文化を創っていこう」と話し、アーティストたちに対して、自分のリアリティを見出すことの大切さを語りました。

椿さんは阪神大震災の被災者の一人ですから、そのリアリティや覚悟には他のパネリストたちと一線を隔し、圧倒するものがありました。いち早く立ち上げた『VITAL FOOT PROJECT』はこの先15年間継続させると宣言し、また、ご自身が教授を務める京都造形芸術大学では、震災孤児の学費免除を提言し、大学のこの先の運営状況と見合わせて、何年に渡って何人の震災孤児を受け入れることができるかを検討し、実施することを決定させています。

活動を始めているアーティストたちの言葉は力強く、東京を中心に語るアートディレクターたちの理論より身に迫るものがありました。わたしたちも「復興に変なモニュメントが立つことがないよう」(椿さん)、そんなことが言われないように、この先のことを考えていきたいと思っています。

(天野)