今、日本だけでなく世界中の人々がこの大地震に心を痛め、被災した人々を励まそうと動き始めています。

"Als ich kann"_Kio Univ.

“Als Ich Kann”(As I can/わたしにできるだけのことを)。この言葉を私は「畿央大学」のプロジェクトを担当したときに知りました。これは、画家ヤン・ファン・エイク(Jan van Eyck, 1395-1441)が作品の額縁へ記した言葉であり、彼が信条としている句です。それをロマン・ロラン(Romain Rolland, 1866-1944)が著書『ジャン・クリストフ』において引用しました。畿央大学の理事長は、この言葉に感銘をうけて、学生たちに伝えたいメッセージとして掲げています。

本大学のパブリックアートプロジェクトは、その理事長先生の思いを、アーティストの目線や、アーティストとのワークショップを通して学生たちへ伝え、日々学生たちが過ごす学び舎へその言葉をさりげなくちりばめ、「気づき」となるよう仕掛けようとしたものです。

プロジェクトに起用されたアーティストは藤本由紀夫氏。彼は、理事長先生との対話を通して、この”Als Ich Kann” という言葉から、”SEE, THINK, DO” (見る・考える・行う)という言葉を紡ぎ出しました。これらふたつの言葉と、同じく理事長が大切にしている言葉「ほほえみ」を”smile”という英語表現に換えて、3つの句をアートワークとして建築空間のなかで発見できるように仕掛けました。

この言葉たちが、今とても心に響きます。偉大なる自然の力を前に私たち人間は無力であることを思わざるを得ないこの時ですが、私たち一人ひとりが「見て、考えて、行動」し、「わたしにできるだけのこと」を為せばよいのだと思います。そして”smile”も忘れずに!

ファン・エイク、ロマン・ロランから藤本由紀夫へ。このアーティストたちのように、創造力(想像力)の連鎖が人を助け、ともに生きるときを、生きる場を助けると信じて。

(天野)