インタビュー#01: 公立昭和病院 アートワーク計画 2


アート作品が設置されて
TA:
アート導入時にワークショップを行いましたが、地域病院としてあのような取り組みがなされたことにどのようにおもいますか?
片桐:
ワークショップ風景 + 参加者作品展示風景

ワークショップ風景 + 参加者作品展示風景

アート計画の中で、患者さんから一番人気があり反応があったのが、このワーショップでした。
ワークショップで参加した方の作品が展示されていた期間がありましたが、地域の方や利用者は身近ものとして感じられたようです。スタッフもまた参加者の作品が展示されたことによって、アートを意識するような変化がありました。
地域中核病院として、地域の方々の参加はとても有意義であったとおもいます。
さらに言えば、病院内でのワークショップをもう少し、回数を増やすようにアドバイスすればよかったと思っています。
病院では、地域病院として母親学級や健康に関するレクチャーなど、患者やお見舞いの方以外の方の利用も推進しているからです。
TA:
設置後、患者さんからのアートに関する反応はありましたか?
片桐:
外来ホールのガラスのアートは「小金井公園の桜やグリーンロードに咲く花など様々のものを想像することができて、癒される」という感想をいってくれた患者さんがいました。
TA:
外来ホール、総合待合ホール、エントランスホールに設置された大きなアート作品、デイルームや病室、病棟廊下等におさめた小さな作品など、患者さんにとってはどちらがいい効果をもたらしていると思われますか?
片桐:
"桜をモチーフにした、Shelagh Wakelyの作品

桜をモチーフにした、Shelagh Wakelyの作品

両方ともあるべきだったと思っています。
昔、この病院にあった桜の木をモチーフにした作品など、病院のイメージとして患者さんに伝わりやすい大きな作品。
そして、空気みたいな存在だけれども、全体の環境としてなにか感じられる小さな作品もあります。
結果として、アートのある居心地のよい空間ができあがったのではないかと思っています。
TA:
最後に片桐室長にとって、アート作品がパブリックスペースにあるということは、どのような期待がありますか?
片桐:
大事なことだとおもいます。日本は、まだアートを楽しむということが海外のように日常的になっているとはおもいません。アートを楽しむことは豊かになりますからね。いろんな人が誰でも、身近にアートを楽しむ環境の創造を、地道に継続的に誘導していくことこそ、行政の役割だとおもいます。
TA:
本当におつかれさまでした。
また、長い間アートにおいても調整いただき本当にありがとうございました。
インタビュー後記

多田美波研究所(外来ホール) / Photo:太田拓実

多田美波研究所(外来ホール) / Photo:太田拓実

病院のプロジェクトは、日進月歩でかわる医療技術、毎年変化する医療制度、そして長期間にわたる場合、院長先生がお変わりになり病院方針の変更などの理由で、計画変更が余儀なくされる場合もある。
5年間近く関わってきた公立昭和病院もこの例外ではなかった。しかし、インタビューをうけてくださった片桐室長が、最初から最後まで、担当してくださったことは幸運だった。最初の思いが持続して最後まで継続していくには、共に歩んでくださるクライアントが不可欠だと、プロジェクトをやるたびに思う。
片桐室長の最後のコメント

「身近にアートを楽しむ環境の創造を、地道に継続的に誘導していくことこそ、行政の役割」

この言葉をまさに実行してくださった室長に本当に感謝である。

そして、患者さんやスタッフから自然発生的に、アート作品の感想が病院側に届いたという報告もわれわれにとっては、とてもうれしいことだ。「施設を使う方にアートのメッセージを届ける」それが、われわれの仕事だから。    

タウンアート  吉田祐美

公立昭和病院 / 多田美波研究所 “照葉” / 外来待合ホール

建築名称: 公立昭和病院
所在地: 東京都小平市
納入完了: 2010年8月
アーティスト:
多田美波研究所(岩本八千代・渡部克己)、
Shelagh Wakely、小西真奈、望月通陽、
豊嶋敦史、日出真司、笠原由紀子 他27名