インタビュー#01: 公立昭和病院 アートワーク計画 1
北多摩北部 小金井市、小平市、東村山市、東久留米市、清瀬市、東大和市、武蔵村山市、西東京市の8市で運営する99万市民の健康を守る急性期高度機能病院である公立昭和病院が22年8月すべての増改築事業を終了しました。 公立昭和病院には、作品総数102点・総作家数34名のアートが設置。そのアート計画における病院側のすべてのマネージメントをしてくださった、病院施設整備室 片桐英樹 室長にアート計画を振り返っていただきました。
(タウンアート インタビュー: 吉田祐美 以下TA)


病院のアート計画をすすめていくプロセス
TA:
平成19年6月に行われたアートプロポーザル以降、4年間大変お世話になりました。
増改築計画はどれくらいの月日をかけて完成したのでしょうか?
片桐:
病院施設整備室 片桐英樹 室長平成5年の基本構想、16年に基本設計のプロポーザルが行われ、18年6月に着工。
以前桜が咲き、象徴的なアーチがあった昭和病院の導入部の解体が始まりました。そして、南館、北館、本館と順次工事をすすめ、長期にわたるすべての増改築工事が22年8月に終了しました。
隣接民有地の買収や工期延長、総工事費の見直しなど、長期における計画には途中計画変更等、想定外の事もおきましたが、新しい時代に対応した医療環境を整備した病院が出来あがったとおもっています。
TA:
ご苦労されたのはどんな点ですか?
片桐:

8市の花をモチーフにした、
Shelagh Wakelyの作品
Photo:Forward Stroke

同一建物内で増改築工事と病院運営が同時に行われていたので、工事の騒音・振動や診療場所の変更等、利用者の方にかけるご迷惑をなるべく少なくし、スタッフにも混乱が起きないよう調整するのはとても大変でした。また、一部建築が完成するとすぐに運用が開始され、長期にわたる増改築工事においては、実際運用しながら運営計画がつくりあげられていく部分もあり、病院の完成イメージを固定したものにできないので、サインやアート、照明など、全体のトータルなコーディネートはなかなか困難でした。

TA:
そうでしたね。承認された場所のアートやアート設置後に部屋の使用目的が変更になったりと、当初、その場所をつかう人を想定してご提案したにもかかわらず、変更を余儀なくしなければならなかったこともありました。

ところで、この計画においてどうしてアート計画を導入しようということになったのでしょうか?

片桐:
豊嶋敦史(総合待合)

豊嶋敦史(総合待合) / Photo:太田拓実

病院の建て替えを考えいく上で、最も重視されたのは、いかにコストを抑えて作り上げていくかということで、このことを中心に計画検討を進めてきました。
しかし着工後、私は患者やスタッフそして病院全体として、医療環境の向上は重要であると考え、関連する講演会等に参加したり、また、いくつかの新しい病院にも見学に行く中で、改めてアートが医療環境に果たす役割は極めて大きいと感じたわけです。
そこで、既存アートや倉庫に寄贈されたまま眠っている絵画等も活用しながら、アート計画を導入してくことを提案し、病院や病院組合管理者にもご承認をいただき、アート計画がはじまったわけです。

TA:
コンペ時に病院スタッフだけでなく、美術大学の学長経験もある方を審査員に起用されていましたがどうした観点だったのでしょうか?
片桐:
そもそもは、管理者からの紹介から始まったのですが、当然、病院スタッフや建築設計事務所はアートの専門ではないので、アートの専門家を入れることによって、まずはそのアートの価値や作品の良否の判断について信頼性が高まることを期待しました。
また、そのことによってプロポーザルによる業者選定での客観性が高まるとも考えたということです。
TA:
アート計画にあたり、弊社のようなアートのプロデュース会社が入ってよかったとお感じになりましたか?
片桐:
そうですね。病院のアートは複数箇所あり、それぞれアートのアイディアを考えていくことはわれわれには、とてもできないですからね。また、プロであることで、いろいろな考え方やアーティストを提示してもらえるので、おもしろかったですね。
TA:
場所ごとに建設準備委員会にアートの内容決定の承認をしていただきながら進めてまいりましたが、その点でよかったこと苦労したことなどはございますか?
片桐:
改築委員会は決定機関だったので、委員会でアートが承認されることで、後日そのアートに大幅な内容変更を求められることがなかった、という意味でスムーズに進めることができたと思います。しかし、スタッフ全員に周知されるということではなかったので、設置後はじめて知ったスタッフも多かったですね。
TA:
今回は病院からの直接発注で、弊社はアート委託工事をさせていただきましたが、その点でご苦労なさったことはありますか?
片桐:
日出真司(予防・検診センター)

日出真司(予防・検診センター)

前にも申しましたが、運用しながら計画が進んでいくので、サインや照明など建築の進捗状況アート内容をトータルなイメージで判断することは大変でした。われわれは立場上、建築工事とアート工事の間の調整を図るわけですが、特に北館ホールや南館エントランスの作品などは、かなり大掛かりな補強工事が必要になりましたので、もう少し設計者を中に入れて、設置工事の前面に出てもらって調整を図る必要があったと思います。
その点、健診センターは、設計者と御社が綿密な打ち合わせができたので、結果的には非常にまとまった環境ができあがったと感じています。

公立昭和病院 アートワーク

建築名称: 公立昭和病院
所在地: 東京都小平市
納入完了: 2010年8月
アーティスト:
多田美波研究所(岩本八千代・渡部克己)、
Shelagh Wakely、小西真奈、望月通陽、
豊嶋敦史、日出真司、笠原由紀子 他27名