2011年10月28日、二年間のスウェーデンでのアーティストレジデンスを得て、2009年より日本での活動を再開した小木曽瑞枝さんの個展に行ってきました。渡欧前にアトリエを訪問して以来久しぶりの再会です。今回はドラッグアウトスタジオという馬喰横山に構えるギャラリーで行われた一日限りのプライベートビュー。スウェーデン滞在中の作品から、帰国後に制作された作品、そして新作まで公開されました。

スウェーデンというと豊かな自然とイケヤといったシンプルなデザイン性の高いイメージがあるのですが、小木曽さんの作品も木をつかい、色使いも蛍光塗料をつかった非常に明るく、はっきりとした形が印象の作風です。モチーフはスウェーデンの家の形や人のいない遊園地など、歩いていて目にしたものを取り上げたそうです。

電動糸鋸で、木を細かく切り抜いた作品は、厚みのある木や、大きい作品以外は全て手作業で切り抜いたとのこと。あまりの細かいディテールの部分については、あやまって切り落としてしまったり失敗することはないのかたずねたところ、今ではほとんど失敗しないとのこと。まるで職人さんのようです。大きな部分については、レーザーカットとのこと。この欠点は切り口が黒ずんできてしまうことで、そのため、黒ずんだ部分は、木のままでみせることもありますが、まず蛍光塗料をきわだたせるために下地として白を塗ってから色をつけることが多いそうです。

作品から離れて距離を持ってみてみると、ギャラリーの白い壁面に、蛍光色の影が移り、不思議な立体感がうまれ、北欧のオーロラを思わせるような光の効果が生まれていました。

 

そのほか、スウェーデンのパブリックアート政策やアーティストの社会における位置づけなど、とても興味深いお話を沢山伺うことができました。とくに驚かされたのは毎年行政が、アーティストの作品を買い上げる仕組みがあるそうなのですが、アーティストを選定するにあたっては、若手アーティストを行政が雇用し、彼らにその年に購入する作品をリストアップしてもらうというシステムがあるということでした。そして買い上げた作品は図書館やホールのパブリックスペースに、購入金額を明示して一般市民に公開するということ。北欧というと福祉が充実しているイメージがありましたが、文化、特に今をいきるアーティストに対する支援も手厚いものを感じました。日本もぜひ参考にしてもらいたいです。

担当:藤沢