先日2月12日・13日の2日間、ブリティッシュ・カウンシル主催でソーシャル・メディアとアートに関わる会議「デジタル・クリエイティブ・カンファレンス」が行われました。
そのひとつとして『新しいパブリック』と題されたセミナーが開催。パブリックアートに携わる者として非常に関心の高いテーマです。一体どのような切り口で語られるのか。Ustreamのライブ中継を通して、会場外から聴講しました。
スピーカーの方々は分野も多岐にわたり、Museum of London におけるiPhoneアプリを活用した歴史アーカイブのプログラムや、ロイヤル・オペラ・ハウスにおける”Twitter Opera”(ツイッターを通して人々の手によって脚本が作り上げられ、上演されたもの)など、英国における先進的な事例の紹介や、フェスティバル・トーキョーのディレクター相馬千秋さんによる演劇における報告など興味深く、ソーシャル・メディアの登場によって新たなアートのかたちが生まれ、その領域が拡張していることを感じました。
ただ、表題にある「パブリック Public」という言葉の定義づけが難しいためか、「オーディエンス Audience」、「クラウド Crowd」と混同して用いられ、度々その意味合いを問いながらの、漠然としたなかでのディスカッションとなり、いかにこの言葉が多義的であいまいであるか、改めて考えさせられる結果となりました。
「新しいパブリック」というよりは、「新しいオーディエンス」という意味合いが強く、あくまでもアート・インスティテューション側の視点として、新しい観客との関係性についての議論であったように思います。ここに根本的な視点の違いを感じました。人々がいかにアートに積極的に関わりたがってきているか、そしていかにアートが変化・構築されていくか、ではなく、アートがいかに人々に作用して、人々がいかに変化・構築(という言葉は適切ではないかもしれませんが)されていくか、それが「新しいパブリック」のアートではないか…。と、思索する次第でした。
カンファレンスは、本セミナーを含め、全てがUstreamにて中継、記録されており、現在も見ることができます。ご興味がある方はこちらをどうぞ。
http://www.ustream.tv/recorded/12657531
(天野)