武蔵野市立大野田小学校の全面改築工事竣工から6年。新築の建物へ入学した当時の1年生が2011年3月に卒業を迎えました。卒業記念品として卒業生112人の手にひとつずつ渡されたものは、学校正門前にあるモニュメント『ユメノタネ―ハコブ・マク・ハル―』のミニチュアキーホルダー。卒業生たちの保護者会(PTA)卒業対策委員会のメンバーによって出されたアイデアによるものです。私たちタウンアートはPTA卒対委員会からの相談をうけて、そのオリジナルキーホルダー作りのアレンジを行いました。ここに至る経緯や、小学校におけるアートや建物のこと等、利用者の目線で語っていただきました。

話し手:平成22年度PTA卒業対策委員会 山﨑千秋さん、中川雅子さん、小泉香苗さん、石栗真美さん(以下、PTA) 聞き手・編集:タウンアート 天野澄子(以下、TA)


校舎やアートと共に育った想いを卒業の記念に。
TA:
アートワークを記念品にしようとした経緯を教えてください。
PTA:
毎年6年生のPTAから卒業対策委員が選出されて、卒業に関わる全てを検討します。卒業記念品もそのひとつで、アイデアを出し合って決めるので年ごとに贈る物が異なりますが、例年は校章が入っている時計やボールペン等、中学校に行ってから使える実用品が多かったようです。でも結局使わずにしまい込んでいると聞き、ならばかえっていらないのではないかという話し合いを経て、記念・記憶に残るものとして正門のアートを何かにしたいというアイデアが出てきました。
校舎にアートがあることは、同じくPTAで作成する広報誌の表紙などに何回か掲載されているし、子どもたちも親もよくわかっています。男の子だったら一度は(正門のモニュメントに)登っているんじゃないかな?!校章よりも子どもたちにはインパクトがあって、(特に今年の子どもたちは)新校舎や作品と一緒に入学した想いがある。だから一番の記念になるかなと思って。

卒業対策委員会の皆さん。キーホルダーの元となったモニュメントの前で。

在って当たり前だったアートが、思い出とともに特別なものとなる。
TA:
小学校にこうしてアート作品があること自体についてどう思いますか?
PTA:
子どもたちにとってアート作品は入学したときから在るので、在って当たり前という感じになっていると思います。校舎のデザインも含めて他の学校とは違うという意識はあると思いますが、子どもたちにとっては日常、当たり前。それがこういったかたちで卒業記念品として改めて手元に残ることで、当たり前だったものが当たり前ではなくなるのがいいかなと思います。
TA:
小学校を卒業するということは、子どもたちにとって日常的に通ってきた場所が、日常ではない特別な場所になるということ。それを象徴するのが正門のアートワークということになりますね。
PTA:
キーホルダーを受け取った卒業生たちは、すぐさま使ってみる子もいれば、弟や妹が居る子は下の子にとられないように大事に箱に入れてとってある子もいる。下の子はやはりすごく欲しがっていて自分も卒業の時にもらえると思っているようです。次年度以降の卒業対策委員会が代々引き継いでくれて、伝統的な卒業記念品になったら面白いですね。将来、同窓会等で、記念品のキーホルダーをもっているのは、何年の大野田小学校卒業生だとわかったりしても面白い。
TA:
学校にモニュメントやアートがあるということが後々、大人になってから小学時代を思い出すときのきっかけとなり、また、自分の居場所を確認する機会にもなるということですね。

建築名称: 武蔵野市立大野田小学校
所在地: 東京都武蔵野市吉祥寺北町
納入完了: 2005年3月
アーティスト:
カトウチカ、 Betsy Alwin、川崎 滋生