大阪府立精神医療センターにおけるアート計画の一環として、絵描き・淺井裕介さんによるワークショップを開催しました。
《植物になった白線@大阪府立精神医療センター》と題された今回のワークショップでは、横断歩道や道路標示で馴染みのある白線シートから、花や葉っぱ、星や自動車などのモチーフを参加者のみなさんに切り出してもらいました。それら無数のモチーフを、アーティストが中心となって外溝全体に枝を伸ばす植物にレイアウトし、バーナーで焼き付けられることで大きな作品として完成させました。

作品およびワークショップ概要


アーティスト: 淺井裕介
タイトル: 《植物になった白線@大阪府立精神医療センター》
開催日時: 2014年10月23日(水)
開催場所: 大阪府立精神医療センター内体育館
参加者: 通院しているこどもたち、病院スタッフ、施工関係者、設計者、施設整備事業者など
ボランティア: 北田杏紗、谷村諒、中川千恵子、星野祥子、森綾花(敬称略、五十音順)

 

ワークショップについて

■ ワークショップの目的

アーティストが実施するワークショップには、制作プロセスを追体験すること、参加者がアーティストと協働して作品を作り出すことなど、さまざまな目的があります。今回のワークショップは、外溝に設置する作品を制作することを目的としていましたが、これを機に交流を持ってほしいという希望は計画当初からありました。そのため、この施設の関わりのある、できるだけ多くの人たちにお声がけをさせてもらいました。既に病院の運用が始まっていることもあり、結果的に病院に通うこどもたちや病院スタッフだけでなく、施工関係者、設計者、施設整備事業者など計57名の方々が参加してくださいました。

■ ワークショップのプロセス


予定していた人数よりも多くの方々に参加いただけたため、当日ワークショップのプロセスを少し変更しました。既に人数分に切り分けられたシートを各人に配り、個別に作業を進めるという予定でしたが、全長50mある白線シートを人数分に分ける作業からはじめました。
シートの両端に等間隔にふられた目印を頼りに一人一本ずつ線を描いてもらい、みんなで場所を入れ替わり、ほかの人が描いた線をはさみで丁寧になぞって切り分けていくことにしました。個人的な作業に終始するのではなく、「つくる」ことを通じて交流ができたことは非常に有意義だったと思います。

■ ワークショップの様子


個々のモチーフの切り出しに入ると、みなさん黙々と制作に没頭していました。参加してくれたこどもたちよりも、実は大人の方々のほうが作業に熱中しているように見受けられ、このワークショップを楽しんでくださっているのだと実感しています。こどもたちの中には自分が作ったモチーフを自慢げにアーティストにみせる子がいるなど、初対面のアーティストとの距離もこのワークショップを通じて近くに感じてもらえたように思われます。
参加していただいた皆さんにとってこの作品は、ワークショップでの思い出や制作に携わったことで生まれる愛着をともない、「自分が作った」作品として、あるいは「身近」な作品として捉えてもらえるようになったのではないでしょうか。

■ 今回のワークショップの意義


淺井さんはしばしばその場所にある「モノ」を組み合わせ、つなぎ合わせることで作品を制作しています。例えば、本病院の外来廊下に設置した作品も建材のあまりを使っています。今回のワークショップとその作品制作について述べれば、淺井さんがつなぎ合わせたものは、目に見えるモチーフだけではないのかもしれません。ワークショップという体験を通して、作家と参加者との、参加者同士あるいは作品と参加者の「関わり」と呼ぶような、目に見えないものも含んでいるといえないでしょうか。
残念ながら参加していただけなかった方たちが、参加した方たちと同じように「自分の」ものとしてみることはできません。その一方で、参加してくれたみなさんがワークショップの思い出を話したり、自分のモチーフを教えてあげたりすることで、ほかの方もまた少しだけ作品との距離を縮めることができるのではないでしょうか。そうして語り継がれることで、この生まれたばかりの作品が、これからも利用者のみなさんの記憶に残る作品へと育ってくれたら非常に嬉しく思います。

※ワークショップおよび現場設置にボランティアとしてご協力いただいたみなさまにはこの場を借りて厚く御礼申し上げます。

担当:高井

大阪府立精神医療センター

プロジェクトデータ抜粋
建築名称: 大阪府立精神医療センター
所在地: 大阪府枚方市
竣工: 2013年3月
アーティスト:
淺井裕介、阿部岳史、井上絢子、上田亜矢子、大久保厚子、奥田文子、曽谷朝絵、
田村久美子、原田郁、若野忍、吉村貴子(50音順)