複数の企業が居を構える共同オフィスビルのエントランスホールは、来訪客を出迎える企業としての共通の顔となる空間であり、同時に日々働く職員にとっての生活背景の1つである。
エントランスの内外を貫く大壁面をキャンバスに、風に舞うように描き出された色とりどりの花々は内と外の空間を一体化し、環境に調和して広がりを感じさせてくれる。ビルと空間をまたいで人々を招き入れ、視線を導く仕掛けになっている。この作品を見上げると色彩鮮やかな花々と重なり合うように、光を反射する透明の花々が描き出される。
印刷されたカラフルな花、クリアコーティング材で描かれた透明の花、さらには自身の手でアクリルで描く花を部分的加え、3つのレイヤーで作品が仕上げられている。
作家・大巻伸嗣はこの作品で、アートの存在が単なる企業イメージの向上や環境を彩り賑わいを与える効果を与えるだけでなく、「視点を変えることで新しいものが見えてくる」というメッセージを伝えている。都会の片隅に現れたアートの花咲くこの「庭」には、作家の発想の根底に流れる 「生ずれば滅する」というフィロソフィが隠されたメッセージとして、また再生して行くことへの想いと共に込められている。
DATA
- 施設名称
- フィールド北参道
- 所在地
- 東京都渋谷区千駄ヶ谷4丁目
- 主要用途
- オフィスビル
- 完了年度
- 2008年10月(2009年4月オープン)
- 建築設計
- INA新建築研究所
- アートディレクション
- 株式会社タウンアート
- アーティスト
- 大巻伸嗣
- 施工
- 株式会社フジタ