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埼玉県立小児医療センター

Saitama Children's Medical Center

2016年12月、埼玉県立小児医療センターとさいたま赤十字病院がオープンした。これらの病院は、医療連携を行うことで周産期医療や救命救急医療の充実をはかり、あらゆる世代の県民に対して高度な医療を提供することが期待されている。

本病院におけるアートワークでは、スタッフや親、友人とのコミュニケーションのきっかけを患者に提供すること、また「安らぎ」と「活力」をあたえられる環境づくりを目指した。タウンアートはこれまでにも数多くのホスピタル・アートのディレクションに携わってきたが、とりわけ本病院において実施した3点の試みを紹介する。

1. お友達としてのアートワーク

病院オリジナルのストーリーとキャラクター

本病院のアートワークは、旧病院(蓮田)の屋外に設置された「カリヨン」とその奏でる「音楽」が、長年患者やスタッフを励まし、愛されてきたという逸話を土台にしている。新病院にカリヨンと音楽を継承すべく、これらを軸としたオリジナル・ストーリー『カリヨンの樹』をtupera tuperaに制作してもらった。新病院を生命力あふれる大きな樹とみたて、安らぎと活力が満ちるようにと願いが込められている。

院内=カリヨンの樹には患者らが肩を並べ寄り添える、愛らしい8体のキャラクターが登場する。tupera tuperaが考案したキャラクターは、子どもたちと同様各々に強い個性をもち、お気に入りのキャラクターをみつけたり、友達のように話しかけたりすることで親しみが感じられるアートワークを目指した。

アートワーク以外への拡張

キャラクターは、木彫やレリーフにて院内各所に登場するほか、院内サインや医療ガスのカバーに使用されるなど、院内環境に統一感をもたせるアイコンとしても機能する。サイン業者との調整のなかで、タウンアートは子どもたちに「見つける愉しみ」、「出会う愉しみ」を提供できるよう、数量や配置など総合的なデザイン監修をおこなった。他社の協力を得たことで、アートワークという枠組みに縛られず、病院全体のイメージプロデュースに寄与する結果となった。

オープン以降の活用

キャラクターをはじめとするアートワークをスタッフらが自発的に発展させる仕組みづくりが、本プロジェクトの試みのひとつであった。院内での配布物や掲示物にキャラクターが活用できるようにイメージデータを提供したことが、その一例だ。また、アートワークの紹介パンフレット、食器などのアメニティにて二次利用するなどのサポートも継続して行っている。こうした副次的なアートワークの活用方法は、持続可能なパブリック・アートの新しいモデルとなると言えるだろう。アートワークがアーティストの手を離れた後、利用者が楽しみながらアイデアを出すことでどこまでも発展していくことが理想的な姿ではないだろうか。

2. 時と共に変化する

時を刻むアニメーション

本病院は、広大かつ細分化されており、時間感覚を失いやすい環境である。患者だけでなく、保護者やスタッフに時間経過、そのリズムを体感できるよう、各所に設置された院内掲示モニターにて、一時間に一回上映される映像作品を制作した。8体のキャラクターたちが演奏会をする時報アニメーションである。※1一定間隔で上映することで、院内にリズムをもたらすとともに、待ち時間に飽きた子どもたちにちょっとした愉しみを提供している。
※1このアニメーション作品は、tupera tupera監修のもと埼玉県立三郷工業技術高等学校の生徒が制作した。

季節で移り変わるモニュメント

ペデストリアン・デッキのモニュメント(豊嶋敦史作)は、日中は穢れのない純白の姿をしているが、日没後は照明によってさまざまな色に輝く。この照明は一定の間隔で演出が行われ、季節によってもその色が変化するようにプログラムされている。短期・長期で変化をもたらすことで、院内にアクティブなリズムをもたらすアートワークとなっている。

3. カタチにとらわれないアートワーク

テーマソングの制作

2015年10月、エントランスホールに設置したアートワークを共同制作する目的で入院患者を対象としたワークショップを開催したが、患者らにとってこの時間をより特別なものにしたいと独自のプログラムを盛り込んだ。音楽ユニット・ビューティフルハミングバードが「カリヨンの樹」のテーマソングを作詞作曲、その場で演奏するというものだ。このテーマソングは非常に好評だったため、時報アニメーションのBGMとなり、また待合などで再生する目的で音源を提供することとなった。

現代美術においては、サウンド・インスタレーションなどカタチを伴わないものも多くみられる。われわれがディレクションするアートも、恒久性を念頭に置きながらも「時代にあったものが何か」、「より広く人々に訴えかけるものは何か」を今後も模索し、積極的に取り入れていきたいと考えている。

DATA
施設名称
埼玉県立小児医療センター
建築主
埼玉県
所在地
埼玉県さいたま市
主要用途
病院
完了年度
2016年10月(2016年12月27日オープン)
建築設計
株式会社久米設計
アートディレクション
株式会社タウンアート
アーティスト
海岸和輝、おもちゃのこまーむ、岸本真之、埼玉県立三郷工業技術高校、 tupera tupera、豊嶋敦史、野田奈津実、ビューティフルハミングバード(五十音順)
施工
清水建設株式会社
その他
病床数:316床

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